こんにちは、あんじゅです。
今回は、好きなことを仕事にしていると迷うことなく言い切れる人のお話です。
19歳の時からお世話になっている美容師さんがいます。ここではKさんと呼ばせていただきますが、かれこれ30何年の担当スタイリストさんで、途中、しばし浮気したこともありましたが再びよりを戻し?!、今もお世話になっています。
Kさんのセンスでお願いします!
が通じるのはもちろんのことですが、驚くべきは、あんじゅの「今、その時」のスタイルや気分ではなく、「少し先」を見越したようなスタイリングをして下さること。
あ、自分、こんな感じになろうとしていたんだ!
と後になってから気づくような、絶妙なカット。
そのカットとたまにカーラーで巻いただけのスタイリングは、美容院に行った当日だけではなく、家に帰って適当に洗髪し、かなり適当にドライヤーをかけただけでも、不思議とうまく再現され、その後の保ちもかなりいい。となると、ついカットに出かける間を開けてしまうのがあんじゅなのですが、そんなお客さんばかりだと、売り上げが減ってしまうのではと心配してみたり。
でも、結局、だからこそ、ずっと何十年も通い続ける美容室になるわけなんですね。
美容室に限らず、どんな商売にも通じそうなお話です。
さて、Kさんは、当初は老舗の某有名サロンのトップスタイリスト、あるいはそれに近い立場で、バブル期にはまさに「死ぬほど」仕事をしたと聞いたことがあります。
ところが、今やバブルも遥か遠い昔のこととなり、数年前にはそのお店が突如、倒産。結果、独立してお店のオーナー兼スタイリストとなって現在に至っています。
髪切ってるだけでいいんだー
と言っていたほとんど職人気質のKさんが、突然、ご自分のお店を整え、経営しなければならなくなったわけですから、お店が始まった当初はご苦労も多かったことは想像に難くなく。
倒産したお店から引き取った2人の若いスタッフさんを抱え、次第にお店の運営も落ち着いてきたかなと拝見していた矢先、今度はコロナ禍に見舞われました。
休業要請に振り回されながらも営業を続けられていますが、2名のスタッフさんがいなくなり、お一人で電話応対、受付からシャンプー、カット、パーマにお会計まで、全てを担当されることとなったとのお知らせをいただいたのは、この秋のことでした。
小さくはないお店なので、お一人ではさぞご苦労ではないかと案じていたのですが、いい意味でのその心配は裏切られました。スタッフさんがいなくなり、非常に伸び伸びと仕事に専念されているとのこと。
朝、ご自宅からお店にやってきて、開店準備。閉店してから、ランドリーを回し、後片付け。今は、なるべくの時短営業となり、それでもほぼ12時間労働。
ぜーんぜん、苦にならないんだ。この仕事が好きだからね
と断言して憚らない。
それが営業トークでないことは、それまでのお仕事ぶりから推察できます。もちろん、嫌なこともないわけではないはずです。でも、それも含めての「この仕事」なんですね、きっと。
以前在籍されていたかなりの規模のお店で指名を二分するほどの実力者で、その分、常に腱鞘炎を抱え、でも、決して休まず、今もそのスタンスは変わらないご様子。あまりに変わらないお仕事ぶりに、何十年という歳月も、お店の変遷も忘れるほどです(自分の年齢もついでに忘れます、、、笑)
嫌々やってる仕事だと、朝起きるのかったるいなあとか、行くの面倒だなあとか思うんだろうけどね。あいつらはそうだったんだと思うよ。
という「あいつら」とは、かのふたりのスタッフさん。ひとりはこれを機会に郷里へ帰り、もうひとりは全く別の業種に転職されたとか。
Kさんのスタッフとして、まさに「密」にその仕事に接することができるので、
ものすごくラッキーなスタッフさんだなあ
と思っていたのですが、一方で、ほぼ全てのお客さんがKさんご指名となると、
この先もずっとこのお店のスタッフとして歳を重ねていくのかしらん?
と、ちょっと気にはなっていました。
結局、かのおふたりは、このコロナ禍を機にそれぞれの道を模索することになったという次第。
そして、Kさんは本来のあるべきところに落ち着いたといったところでしょうか。
あんじゅがまだ若い頃、好きなことは仕事にしない方がいいという言葉を、度々、耳にしました。
好きなことは趣味にして、世の中で評価される仕事に就こうとすることも、一つの選択として間違っているわけではないと思います。その方が、収入という点では、おおむね間違いないのが実情です。
ただ、昨今、「好きなことでないと稼げない」とか、「好きなことこそ仕事にしよう!」という機運を、かつてよりも相当頻繁に感じることがあります。もっとも、それを現実のものにできる人は、今でもごく僅かなのかもしれません。
あんじゅの場合は、社会で評価されるという枠の中で物事を考えていたように思います。受験勉強に勤しみ、社会で評価される仕事の術を身につけようと努力してきたことは否めません。その中で、コンサルティングの仕事は割と好きだったのか、朝起きるのも出かけるのも、さほど苦ではなく、むしろ気合が入って楽しかったものでした。
最初に好きなことを仕事にできなかったとしても、そういったちょっと楽しいが積み重なって、好きな仕事になっていくということもありそうです。Kさんが美容の道に入ったきっかけについては、また今度、改めて聞いてみたいと思っています。
何にせよ、自分の力でご飯を食べていくことができれば上出来!ですよね。
ちなみに、どこのお店でも、シャンプーはスタッフさんのお仕事で、Kさんはカットやパーマ、ブローの一部でご登場するのが常でした。
Kさん、シャンプーできんだ!
と他のお客さんに冗談まじりに言われたというKさんですが、あんじゅもKさんにシャンプーしてもらったのは、数十年来、初めてのことでした。
これがまた、全然違うんですよ。というお話は、長くなりそうなのでまたの機会に。